肩甲骨や腕、肘、手首といった部位の運動や感覚を支配する腕神経叢(脊髄から出てくる第5頚神経から第8頚神経と第1胸神経から形成される神経の繋がりをいう)と鎖骨下動・静脈が斜角筋や肋骨、小胸筋などにより絞扼(こうやく)、圧迫されて症状が出現します。
初期症状は、つり革につかまる動作や洗濯物を干すように腕を挙げる動作で腕のしびれや肩から肩甲骨、腕にかけて痛みが生じます。症状は腕の内側から小指側にかけて出ることが多く、時には刺すような鋭い痛みやビリビリとしたしびれなどの感覚障害に加え、握力低下や指の細かい動作がしにくい、などの運動麻痺が出ることもあります。また、指の運動障害・麻痺がある場合、手の甲の骨と骨の間や手のひらの小指側の筋肉のもりあがりが痩せて細くなったりします。
鎖骨の下にある動脈が圧迫されると、腕の血管の流れが悪くなって腕が白くなったり、痛みが生じます。鎖骨の下にある静脈が圧迫されると、腕と手は静脈血の戻りが悪くなり青紫色になります。
絞扼部位によって、肋鎖症候群、斜角筋症候群、小胸筋症候群(過外転症候群)と呼ばれますが、総称して胸郭出口症候群と言います。
『治療法紹介』
症状が強くない場合は保存療法が選択されます。症状を悪化させる腕を上げた状態での仕事や重量物を持ち上げるような運動を避けることが重要です。斜角筋、小胸筋の硬さや筋肉の張りが原因で、肩甲骨が挙がること、下がることにより症状が変化することがあるので、それらの筋肉の柔軟性を改善させて症状の軽減を図ることができます。
重症例では、原因(絞扼部位)に応じて、第1肋骨切除術や頸肋摘出術、前斜角筋切除術が適応となることがあります。当院では、連携のある手術ができる病院への紹介状を作成することができます。また、術後は当院で運動器リハビリテーションを行い、術後のフォローもしています。詳細は整形外科医にご相談下さい。